第14話

おまけ。




「宜しくお願いします」 


私はスタンプと一緒に一言を送る。

それからソワソワしながら母の作ってくれた焼きそばを食べた。

もっと気の利いた事を書いたら良かったと後悔もしている。



「“まつおしじま”っと。」

調べるとデジタルシングルが発売されている事を知り、コンテンツを購入した。

それをバックグラウンドで再生する。

SNSを見せてもらう。純粋にファンとしてだ。



「こら、莉久リク。食事中でしょ。スマホやめなさい。」

「はーい。」


母に窘められて私はスマホを置くと、急いで食べ終えてつぶやきを読んだ。



「新曲アップしました。よろしくね。」

「アンプ買いました。クリアでエネルギッシュに音が届けられるお」

シンガーソングライターらしいものもあれば


「SSRきた!」

「卵焼いたら殻入ってて歯と歯の隙間に刺さった助けて」

個人的な内容もある。猫を飼っている事も分かった。



つぶやきを読み進めているとメッセージが届く。


すぐに既読を付けたら、待ち構えてたみたいかな?どうしよう。


そんな葛藤をしていたら、手の中でまた通知がくる。


 

『こちらこそ宜しくお願いします』


『りくちゃんは何か食いました?』


宜しくだけじゃ続かないから気を遣ってくれたのかもしれない。

莉久ちゃんという文字がなんか照れ臭い。


嬉しさが大半を占めると同時に、さっきからずっとどこか夢を見ているような心持ちでいる。



「母の作ってくれた焼きそばです。静寂くんは何か食べましたか?」


『レトルトカレー温めます』

『その前に、猫にエサあげます』


「飼われてるんですよね!つぶやきで見ました」


彼の自己紹介欄には「猫と暮らす歌好き」とだけ書かれていた。

マチルダというメス猫らしい。



『見ないで下さい。恥ずかしいんで』


「面白くてけっこう読んじゃいました 

それに、静寂くんに近付けたみたいで嬉しいです」


『ほんとに参った』


あ。読んだ事を言わなければ良かった。

誰でも良い気はしないかもしれない。 

反省しているそばからまたメッセージの通知音が鳴る。



『りくちゃん、可愛い』


「え?!なんで!」

思わず声をあげた。顔に熱が集まる。



『俺もりくちゃんの事を暴きたい』

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