第10話

見られていた事に恥ずかしくなって、でも静寂くんの歌が私の中で作用していた事がなんだか嬉しい。


静寂くんは、多分変な表情をしている私に視線を向けた。



「すげぇぐっときて。おねーさんのそれ、何度か見かけて、ずっとさり気なくおねーさんの姿探してました。」 


真っ直ぐな瞳が私を捉えて離さない。

大切な言葉を紡ぐように私に剥けられてる。



「最後に会えて良かったです。」

「さいご?」


「小さな事務所だけど、俺メジャーデビュー決まってて。今日ここで歌うの最後なんです。」



私は驚きのあまり、彼の言葉を理解するのに少し時間が掛かった。



「すごい!すごいじゃないですか!プロ?!え!すごい!応援します!」


「してくれますか?」


「当たり前じゃないですか!快く歌ってくれたし、ファンになっちゃいました。なんでもっと早く足を止めてなかったんだろうって、さっきから後悔してるんです。」


静寂くんが嬉しそうにくしゃっと笑顔をみせたから、私も温かい気持ちになる。


この人をもっと知りたい。

いろんな顔が見たいと思った。

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