第8話

「えー、今日も楽しく歌う事が出来ました。」


そう切り出した静寂くんは、ありがとうと頭を軽く下げた。



「同じ曲2回歌えたのも楽しかったです。ちょっとずつ毎回手応えが違うような、ね。歌詞変えたけど楽しめた?」


静寂くんが問うと、ギャラリーが楽しかったと異口同音に答えた。


「うん。良かった。そうそう。お知らせ入れるんで、SNSチェックしてくれたら嬉しいです。アホな事書くの少し控えるから。

じゃ、解散!」


みんなに手を上げてそういうと、ギャラリーは静寂くんに声をかけるなどして各々の向かう方角へと進んだ。


私はお礼を言いたかったけどタイミングを逸して立ち尽くしている。



「おねーさん、もうちょっと付き合ってもらっても良いですか?」


最後に話しかけた一人が帰るとすぐさま、静寂くんはギターをケースに仕舞いながら尋ねてきた。



「はい。」


失礼だ!って怒られるかな?!

ショルダーバッグの持ち手を握りしめ、背筋が伸びた。


静寂くんがすぐに背を向けて片付けをしていたから、彼が私の反応を見て笑った事には気付かなかった。

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