第4話

言ってあげてー、なんてギャラリーからの声も聞こえた。


男の子はギターを肩にかけたまま立ち上がると私に近付いてくる。

思わずうつむく私の視界に、男の子の黒い革のトングサンダルが2つ。


私の横に立つと形の良い奥二重で覗き込む。

心臓がせわしない。



「言ってください。ていうか、聴かせてもらいたいです。今おねーさんが思った事。」


ジャン。

アコースティックギターの弦を弾いた男の子は覗き込みながら問う。



「今の歌、糞ダサかった?」

「違います!」


良かった。そう呟くと、ピックで弦を弾く。

さっきの曲のアウトロだろうか。


言わないと失礼だ。そう思ったら呑み込んだはずの言葉が口からこぼれて出る。



「今の歌、もう一度聴きたくて、それで思わず…。ごめんなさい!変な事言って。失礼ですよね。」


慌てて訂正した。

聴いてなかったと取れるような事を言われて喜ぶ人なんて、きっと居ないだろう。

いま来たところだと咄嗟に言えない自分が情けない。

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