第38話

翌々日、俺は糞忙しいにも関わらず呼び出しを食らった。


相手は少々厄介な人物で、教会で電話を掛けた一人目だ。

が、会ってる所をあまり見られるのは利口じゃない。


誰も通らないパチンコ屋の裏の狭い通路が待ち合わせ場所だった。



「……冗談ですよね。」


塀に凭れたまま顔を上げた俺の声は自然と低くなった。


はりつめた空気。

ぶつかる視線の奥に嘘や油断を探す。


ハタからでは睨み合いに見えるだろう。



「いっちょ前にヤクザの顔が出来んだな。」


「三井サンは相変わらず更けてますね。また生え際後退したんじゃないですか。」


からかい言葉に本音を返した。

そいつは軽く俺を睨んでから右手の週刊誌を塀に置く。

ライターを手で覆い、煙草に火を点けた。




『爆弾事件の被疑者が飛び降り自殺した。』


会うなりそいつに言われて、俺は掴み掛かるのを必死に抑えているところだ。



「仏は36、無職。ここいらに1年前に越してきたらしい。爆弾事件の後には掲示板サイトに"御咎清掃完了"って書き込んでやがった。みんな事件後だからスルーしてたがな。


自殺直前には"最後の清掃です。さようなら"って書いてたらしい。窪山の事だろう。


部屋にはお前らと窪山を吹っ飛ばした運送業社の盗まれた制服と、届けるときに使った伝票とかの小道具も有ったし、そいつの指紋が出たってよ。

部屋見た奴が爆弾工場だっつってた。」

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