第36話

収穫が無い事を悟った時だった。


黒のサマーニットを目深に被った男が店に入ってそのまま棒立ちで居ることに気付いた。


初めての奴が戸惑うのは無理もない。

男だけで賑わう店内、空いてるテーブルが無いからだ。


カーキのヘンリーにデニム。

身形は至ってラフな男は、マスターの身振りから察するにに好きな席に着くよう言われている様だ。


しかし突っ立ったままの男は、酒を作り始めたマスターを暫くの間見ていた。



「すんげーマスター見てんなぁ。」

「ツトムも気付いたか。マスターに一目惚れだろうな。」


そうだろうか。


俺はそうは思えなかったが、黙ってグラスを傾けた。




コブラに行った3日後、御咎町はものものしい空気に包まれた。



今度は窪山組が爆撃された。

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