第30話

世話になった地味女と病院には"若頭補佐"に就いた飛田を向かわせ

痛みを隠して俺は、報復の準備を着々と進めた。


肝心の犯人は不明なままだが、大方窪山組の仕業だと組の誰もが考えていたから、ドンパチの準備も抜かりは無い。



『おいツトム、若ぇ連中がいきり立ってるがサツも神経尖らせてる。おめぇが上手く仕切れねぇとこっちが割食う羽目になるんだからな。』


組長の言葉を後部座席で窓外を眺めながら思い出す。

俺は組の連中を押さえ付けてないとならない。



頭や組長の為に運転していたが、一転、後部座席に座る立場。


目まぐるしい変化にあの日々は忙殺されていく。


あの教会の入っているビルも景色の一部に過ぎない。



「恩人ちゃんが気になるか?」

「は。なんでだよ。」


「今教会の方見上げたからさ。」

「…前見て運転しろ。馬鹿が。」


「ま、住む世界が違うし、今やお前はナンバーツーだもんなぁ。」



住む世界。


そう。あの平和で退屈な日々は

本来俺には縁の無い異世界。


だから



「…降ろせ。」


移転した清和ローンの前にあの地味女が居る事に内心驚いた。

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