裏社会に生きる俺がまっとうに生きる教会職員に残すのが清拭のしかたなんてな。

「世話んなったな。」

俺は負傷した時に持っていた唯一のオイルライターを眺めていた。

「いえ。…煙草、外なら大丈夫なの…」

「俺は吸わねぇから。」

「え？」

「上司の煙草に点ける為のなんだよ。」

「そ、そうなんですか？」

「意外か。」

「い、いいえ。」

「ガキの頃気管支弱くてな。それでも親父が構わず吸ってたから、ゲホゲホしっぱなしだった。」

「それは…お辛かったですよね。」

「覚えてねぇや。」

辛かった気もするし、なんて事無い気もする。

昔の事なんて大体忘れちまった。

「ふふ。」

口元を綻ばせた女は、訝しげに見やる俺にその理由を垂れた。

「ヤクザさんの事が聞けて、嬉しかったんです。」

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