第25話
昼飯が済むと地味女は清拭に来た。
最初は見ながらだったプリントアウトした手順はもう必要ないらしい。
「もう見ても何ともねぇのか。」
「え?」
「モン…刺青だよ。最初の頃あんたは見る度に手が止まってた。」
俺はそれがおかしかった。
馬鹿みてぇに正直な女だ、と。
「すみません。」
「謝るな。それが普通の反応だろ。」
「でも、…失礼でしたよね?」
「堅気の反応気にしてたらヤクザなんか出来ねぇ。」
「ありがとうございます。傷はほんとに残らなそうですね。」
何に礼を垂れたかは分からねぇが、傷が残らないのは助かる。
背中には大きく翼を広げるワシ。
黒とグレーのそいつは目だけに有彩色の黄が入ってる。
色をもっと入れろと言われるが、完成形であり、俺はこれを気に入っている。
「福音書を書いたヨハネのシンボルが、太陽を見ても目が眩まないワシなんです。
キリストの昇天と結びつけられ、祝福をもたらす力を持ってるんだそうです。
…すみません。興味無いですよね。」
「太陽を見ても、か。」
「はい!」
地味女の言葉はよく分からなかったが、太陽を見ても目が眩まないってぇのは気に入った。
そんな大層な動物がヤクザの背中に彫られてるってぇのに、こいつなんでご機嫌なんだ?
地味女は丁寧に傷をかわしながら俺の身体を拭いた。
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