第21話

「なんかあの女には声とか雰囲気が穏やかな感じしたからな。」


「寝言は寝て言え。」


飛田から窓外に視線を移した。

俺もそれにつられる。



街を夕焼けの橙が包む。

少しずつネオンが点り、街が活気付くだろう。


俺ばかりが立ち止まっている。



「はい、お前名義の新しい携帯と服。」


俺の服が入った紙袋と携帯会社の紙袋が俺の上に置かれた。



「政木に移るか?」


政木。これはウチが世話になってる医者だ。

そこに行けばドジ素人の手当てや世話は必要なくなる。



「…いや。もう此処を出ようと思ってる。政木にも行かねぇ。」


「お前が大丈夫ならその方が良い。組長はお前が戻るのを待ってる。」



飛田はいたく真剣な目差しで俺に告げた。


それは池島さんの死によって俺にもたらされていた一つの予感を



「次の頭はお前らしい。」



現実のものにした。

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