第20話

「待てよ、飛田。……あの時、池島さんは便所に…」


「そうらしいな。でも、爆発直前戻ってきたんだと。入江が見てる。」

「……。」


舎弟の入江が脳裏を掠めた。

しかし言葉が浮かばない。



「荷物持ってた岩井とたまたま近くにいた頭の2人死んだ。それとお前含む4人が重軽傷。ガサ入れかって勢いで調べられてな。組の事務所じゃねぇのが幸いだったよ。」


当時清和ローンに居なかった飛田は言う。


俺は池島さんが死んだ事に驚き、声も出せなかった。



重い沈黙をどうする気にもなれない。

信じらんねぇ。そればっかで。

だけどこんなショーバイじゃこんな事頭の隅に無い方がおかしくて。


そんな俺に飛田は笑う。



「お前が見付からないからさぁ、ミンチになったかと思ったけど。生きてて良かった。」


よく見れば、酷く疲れた顔をしている。


染めに行くって言ってた髪は生え際が黒く、行く余裕なさが窺い知れた。



「あの女が助けたらしい。」

「だからか?」


「何がだ。」

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