第19話

翌朝、地味女が俺の居る仮眠室に飛び込んできた。


「騒々しいな。どうした。」

「あの!あの、ヒダさんって方をごぞ…」


慌てる地味女の背後からよく知る男が抱き着く。


「居るんじゃん。早く言ってくれよー。」

「きゃあぁぁ!は…、離して!離して!」


抱き着かれただけでぎゃーぎゃー騒ぐ地味女に見兼ねて俺は口を開く。



「離せ、飛田。」

「それ最初に言う?みっけてくれて有り難う、だろ?」


「聞こえなかったか、飛田。」


解放された地味女は慌てて俺の近くに来た。



「部下だ。悪かったな。」

「…いえ。」


強張っていた表情が和らぐのを認めて、俺は飛田に顔を向ける。



「よくここが分かったじゃねぇか。」

「苦労したよ。堅気は関わり合いたくないみたいで喋らないから困る。

あ、お嬢ちゃんは少し外して欲しいかな。」


飛田の言葉に地味女は失礼しますと早口で言い、足早に立ち去った。



「ありゃ新しい闇医者か?」


にやつく飛田は無遠慮に地味女の椅子に腰を下ろした。



「連絡しろよ。お前が居ないんじゃどうにもならねぇ。」


「有るのはライター一つだ。大体俺が居なくても池島さんが居るだろ。」



俺は大袈裟だとばかりに言葉を返す。



カシラ…池島さんは、死んだよ。」

「…は?」


こいつなに言ってんの?俺は乾いた笑いが溢れる。

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