第18話

「本当は、報復行為が行き過ぎていたから"同程度の報復に止めなさい"って意味だったんです。


私達には"右の頬を叩かれたら左の頬を差し出しなさい"って言葉が有ります。

報復は連鎖しますから…」



食器を持ったままの女を鼻で笑う。



「やられっぱなしで居るなんて正気の沙汰じゃねぇな。」


「ですよね。だけど…」


苦笑した女は俺に視線を寄越した。


悲しそうな

痛そうな


だけどそれを隠すように口元に弧を描いて。



「もう傷付く貴方を見たくないって思いました。」


失礼します、と女は部屋を出た。



傷付く俺を見たくない?




「………なんだそりゃ。」



向けられた事の無い言葉に捕らわれて

自分が呟いた事にも俺は気付かなかった。

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