第16話

「清拭…だっけか。あれが効いた。」


「なーんだ!それで!」


明るくそう言った地味女は、その翌日から清拭をするようになった。



「えっと…、いきます!」

「あっちぃ!」


「え?ごめんなさい!」

「…くく。冗談だよ。」


「…。」

「…怒ってんのか?」


「…別に。」

「よくドジかますよな、あんた。」


「…そんな事!……有りますね。ドジばっかりです。」

「ああ。今朝は入っていきなり飯ひっくり返したしな。」


「さっきはすみませんでした。」

「もう良い。てかすぐ謝んな。」



"謝ったら負けだ。漬け込まれるぞ。"


なんて。言うのはやめた。



『じゃあ、りっちゃんもれいじくんも、お互いに"ごめんなさい"しよ?』


そんな事が平気で言えるメルヘン頭じゃあ、理解なんか出来ないだろうから。




その夜、夕飯を下げる女に俺は感じていた疑問をぶつけた。



「此処に神父ってぇのか?そういうのは居ねぇの?」


地味女は眉を下げて口端を持ち上げると口を開く。

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