第11話

「運送屋さん、ですか?見てませんけど。」


俺の口から溜め息がこぼれた。

だからなんだろう。女は慌てて謝りだす。



「ご、ごごごめんなさい!わ、私…」

「あんたは悪くねぇだろうよ。」


「……ヤクザさ…」

「あ?」


「ひっ!ご、ご、ごめんなさい!お名前知らないからつい!ごめんなさい!」


「…名前なんて、なんでも良いだろ。

ヤクザさんで良い。ヤクザさんで。」


「え?………はいっ。」



面倒になった俺に女が嬉しそうな声で返事をした。

必死すぎだろ。



女は自分が作ったと云う粥をせっせと俺の口に運ぶ。



「ゆっくりで良いですからね?」

「…。」


「体調崩すと母が作ってくれたんです。あ、でも母は祖母に教わったみたいで。」

「…。」


「ヤクザさんも、きっと良くなりますよ。」


「口ん中いてぇから…もう良い。」




…変な女だ。

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