第10話

「此処は御咎町教会です。」

「聞こえねぇんだ。大きい声で言ってくれねぇか。」


「御咎町教会です!」


は?…あ。だからこの女祈ってたのか?

俺が考え込むと女は慌てたように口を開いた。



「えっと、私が歩いていたら爆発音がして、驚いて立ち止まっていたらあなたが血塗れで、目の前で倒れて…

それで私、病院にって…、そしたらそれは困るって!

この街はそういう街だから…。でも私、放っておけなくて!


でも診てくださったドクターは私の知り合いで。その。通報はされないから安心して下さいっ。

……怒ってますか?!」



まるで俺に怯えているようだった。

それは大概の堅気が俺達に向けるそれと変わらない。



「いや。助かった。」


病院に突っ込まれたら刑事がうるせぇからな。

暫く此処で潜伏してたほうが色々と楽だろう。そんな事を思う。


安心したように息を吐いた女は俺の状態を説明した。

肋骨に2本ひびが入っていて、全身にガラスが刺さっていたらしい。

目は腫れ上がってるし鼓膜もおかしいから頭がガンガンしている。



女の声は少し高くて、煙草や酒でやけているのとは違う柔らかいものだった。



自然と目蓋が閉じた。


が、俺はある事に気付いた。

小さな期待を抱いて問う。



「あんた俺と出会う前、運送屋見なかったか?」

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