第7話

商品の品質チェックを済ませれば、池島さんに呼び出された。


池島さんは、ドンパチ通りの南側にシマを張る『仁道会 侠和組』の若頭で、俺の兄貴分だ。

補佐を置いていないが、大抵その役割を俺が果たしている。



「臭ぇなオメェ。」


オイルライターの火を近付けると、池島さんが煙草に火を点けた。それでこの一言。


抱いた女の香水の臭いだろう。



「糸田ンとこに新しく入った女です。」

「聞いてねぇよ。」


「はは。」

「で?どうだった?」


「くく。あれは駄目。ガバガバでした。尺八はまぁまぁかな。」

「はっ。」



後部座席のドアを開けて池島さんを載せた俺は、この縦社会には存外順応している。

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