第4話

ゆっくり左手で触れると腹にはコルセットみたいなモンがしてある。

目は左側が開かない。殴られたボクサーみてぇに腫れ上がってるんだろう。



「…あんたは……」


「此処は教会です!私此処の職員の…」


回しモンかそうじゃないのか。そんな疑問が半端に吐いて出た。

しかしそいつの話は聞こえない。アーメンの時はやたらでかかったのに。


それにしても、喉が焼ける様に痛い。

てか、乾いてる。口ん中がねっばねばだ。



「……みず。」


痛みも喉の乾きも相当で、警戒する余裕なんか無かった。


蚊の鳴く様な声だったにもかかわらず、その女は病院で使う様な透明の容器で俺の口に水を注いだ。

後でそいつが『吸い飲み』って名が有ると女に教えられる訳だが



「あ"ぁっ…てぇ。」


大丈夫ですかなんて女がオロオロしながら聞いてきた。

んなわけあるか。

それでと2杯飲むほどに喉は乾いていたらしい。

俺はもどかしい水流を喉へ流し込んだ。

 

「恩に着る。」


「…何か有ったら呼んで下さい。」


女の声も静かに立ち去った物音も、意識が遠退いた俺には聞こえなかった。

 



寝てる間を利用して少しばかり話をしよう。



この国で普通に生きていくには真っ当に勉強して真っ当にお友達と遊んで真っ当に就職して真っ当にはたらかなけりゃならない。


それが出来なきゃ悪事を働くかホームレスか死ぬかだ。



真っ当を貫けない上馬鹿な俺は落ちこぼれ、『組織』に飛び込んでった。


俺はヤクザってやつだ。

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