ー晴ー俺の愛しい

42話

「活動を再開した咲き誇って群青と、人気急上昇中のロックバンドVanillaです」


咲き誇って群青の隣にVanillaが座ることになった。

偶然にも俺の隣に、優大さんが居る。

威圧感を感じるような。別に気にしないけどね。

びびるわけないでしょう。この俺が。



サングラスをかけた男性司会者がインタビューをする。


「まずは咲き誇って群青、何で活動再開したの?」


「いい曲が出来たからですかね。今回は優大が詞も曲も作ってきたんですが、めちゃくちゃ良くて」


康太さんが答えた後、快さんにまわってきた。


「メンバーが3人しかいないですが。この曲、やりてぇなって話になったんです。なっ、優大」


「はい。心を込めて、大切な人の為に作りました」



随分自信があるみたいだ。過信だということを教えてやりたい。


俺だって、それはもう大切に思いながら一生懸命作ったよ。


それに比べたら大した曲じゃないだろう。



彼女をより大切に思うのは優大さんじゃなくて、俺だ。


それを真希に教えてあげよう。


「新曲なので、期待ですね。演奏が楽しみです。優大君がボーカルです」


男性司会者がそう言ったあと、女性の司会が喋った。


「ここでランキングです。今週の1位はどの曲でしょうか?」


シングルランキングが上位まで発表されて、2位と1位がこれから出る。



No.2 咲き誇って群青 愛しい存在


2年半ぶりに活動を再開した、咲き誇って群青。新曲がランキング入り。




No.1 Vanilla 奪いたい衝動


最近勢いが止まらないモンスターバンドが、まさかの1位。今回、初出演で奪いたい衝動を初披露。



手応えがあったから、そんな気はしてた。


優大さん、きっと悔しいだろうな。

自分たちが2位だもんな。


生意気を言った俺の曲が1位。


生放送にも関わらず、にやけてしまいそう。


1番なら、きっと真希も気づいてくれるはずだ。

放っておけない存在にならなくては意味が無い。


ランキングの後、咲き誇って群青のパフォーマンスが終わり、Vanillaの番に。


インタビューに答える。


「今回自信作なんですよ。大切な人を思って作りました」


優大さんのインタビューに被せるように言った。


「大切な人の全てを奪いたい衝動に駆られたんですか」


サングラスの司会者が聞いてきたから、

全力の笑顔で答えた。


「いや、俺は奪われた側なんですよ。だから奪い返したい。そんな衝動で作りました」


「かっこいい衝動ですね。スタンバイお願いします」


司会者の言葉に俺とメンバーは席を立った。


真希は咲き誇って群青を見てるはず。

でも俺を、俺だけを見てほしい。

誰よりもかっこよく歌うから。


愛する気持ちだけは誰にも負けない自信があるんだ。


真希との思い出1つ1つ、鮮明に思い出せる。

どれが欠けてもいけない。

俺自身を形づくるピースだから。

彼女が与えてくれたものをちゃんと返したい。全力の気持ちで。


至って真剣だ。パフォーマンスには手を抜かない。魅せるために努力だってしてきた。


怖いものなんて何もない。



もう1度、俺だけの真希であってほしい。

髪をかき上げた瞬間にスイッチが入る。



ーー 瞬間 奪ってしまいたい 衝動が俺の胸に 深く爪痕を残す 愛してるのにね 君は他の男の腕の中 今すぐにkissして俺だけのものにしたい ジェラシー感じずにはいられない 愛してくれ 俺だけを ーー



奪われたものは、どんな手を使ってでも奪い返す。

やり方なんていくらでもある。

この気持ちは誰にも譲れない。愛してるよ。


たまんない。

歌い終えた後に舌なめずりをした。


それもパフォーマンスだと思われたみたいで、歓声と悲鳴があがる。


真希を思うと身体が熱くなってきた。

体の温度が上がってとろけそうになっている自分に軽く笑った。

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