散らばる感情
ー優大ー揺るがす存在
40話
今日は生放送の音楽番組に出る。
僕が代わりにボーカルをやるなんてリスナーに受け入れてもらえるかな?
いや、何度も練習を重ねたんだから大丈夫。
やっぱり、いい歌を作ってしまったらバンドをやりたくなる。
バンドを再開させるのに正直なところ、躊躇いはあったけど、快先輩と康太が大丈夫だって背中を押してくれた。
バンドが止まったままで良いのか悩んでいた。そしたら、もういいじゃんって康太が言ったんだ。その言葉の後
「オレ、この愛しい存在をライブでやりたいよ。藍来さんは居ないけど、何とかしよう」
いつも、意見しないのに珍しく発言した。
「そうだよな。俺も前に進んだ方がいいと思うわ。じゃなきゃ俺等がバンドが終わるよ」
厳しい快先輩の言葉が強く刺さる。
確かに、このままでいいのかって聞かれたら、絶対に駄目だ。
でも、肝心のボーカルが居ない。
どうしようか考えたら、康太が僕がやったらいいよ。作曲者だしって。
冗談言うなよ。って返事をしたけど快先輩がそれ、いいじゃん!って乗っかったんだ。
リーダーの快先輩がその気だからやるしかない。
僕は必死に上手くない歌を、人前で歌えるレベルになるようにトレーニングした。
真希ちゃんが見てくれるから頑張ろう。
……思い出す。あの時、彼女の前で泣いてしまった。
まさか、あっくんに恋愛感情を抱いてるとは思わなかった。
真希ちゃん、あっくんが居なくなった時、この世の終わりみたいに悲しい顔してた。
真希ちゃんの感情を揺らして良いのは僕だけだ。
だから、あえてあの時涙を流してみせた。
真希ちゃんの心は僕のものだから。
あっくんから完璧に奪ってやった。
時間になるまで、楽屋で待機をしてるとドアをノックする音が聞こえた。
開けると一瞬、あっくんかと思った。
けどよく見たら違う。
黒髪ミディアムウルフの顔立ちが整ってる男が立っていた。 鼻筋が通っていて、肌が綺麗。
あと、背が高い。というか、足が長くてスタイルが良い。
あれ、その目……
深い情熱を宿してるように感じる。
あっくんと同じじゃないか。
怖くなってきた。まさか、生き返ったとかじゃないよね。
とりあえず彼を楽屋に入れる。
「初めまして。俺、Vanilla(バニラ)ってバンドでボーカルやってます、
心地よい低い声が胸に響く。ボーカルをやってるだけあって、芯のある甘い声をしている。
初めましての言葉でハッとした。生き返るはずなんてないと。でも、やっぱり目の前の男は不気味で。
生き写しかと思わずにはいられない。
いや彼はVanillaのボーカルなんだ。
だから、別人だ。
そういや、Vanillaって最近、人気のロックバンドじゃん。テレビで見かけたような気がする。
「メジャーデビューしたばかりなので、ご存知ないでしょうね」
「いや、知ってるよ。この前、CMで見たかもしれない」
「ありがとうございます。咲き誇って群青がバンド活動を再開してくれて嬉しいです」
その後の言葉に、耳を疑った。
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