ー藍来ー俺の真希なのに

37話

何で俺を放ったらかしにするんだい?


何日経ってるか分からない、きっと1秒ですらも嫌に長く感じてる。


こんなに時間って果てしないのか。一緒に居ると1日があっという間におわってしまうからな。

毎日がとにかく楽しくて、たまらなく愛しい。

そんな日々が続いてくれれば幸せなのに。


真希が話しかけてくれるのをずっと待ってるのに。


寂しいな。寂し過ぎて狂いそう。

いつも傍に居るものだったから、こんなに距離を置かれたのは初めて。


心配してるよ。仕事も、優大の事も。

どうなっているんだろうか。不安でならない。


離れていたって気持ちは変わらない。

何一つとして、俺は俺のまま。


早くいつもの笑顔を見せて。


真希、大好き。



「優大君、ちょっと散らかっててごめんね。座って待ってて。飲み物、お茶で良い? アールグレイとダージリンがあるけど、どっちにする? 」



「アールグレイが良いな」


「分かった。待っててね」


「うん、ありがとう」



え、優大が居るのか? 真希の部屋に? 何で?


「あっくん、聞こえる? 僕だよ」


声が聞こえて、驚きと怒りで頭がおかしくなりそう。


「なんでお前が居るんだよ」


「なんででしょうね」


「ふざけんな。早く出ていけ」


「何で出ていかなきゃならないの? 僕、彼氏なのに」


「は? お前が真希の彼氏な訳ないだろ。だって真希は……」


「俺のものだから、でしょ? 違うよ。僕の彼女だよ」


絶対嘘だ、真希が優大の彼女?

だから、部屋に呼んだのか?

意味が分からない、何で……



「はい、お茶どうぞ」


「ありがとう。そういえば僕があげたお守り、身に付けてくれてるんだね。嬉しい」


「優大君だって、私があげたの付けてくれてる」


「気に入ってるんだ。そういえば、エンジェルフェザークォーツは?」



「あっ! すっかり忘れてた」


真希と優大が一緒に居る。それだけで吐きそうなくらい嫌。



「藍来、放って置いたままだった」


彼女の首元には、青いハートの石とダイヤが輝いている。心の底から嫌。


ハートを粉々に砕いてしまいたい。

その形は優大の思いなんだろうから。


ああ本当に無理だよ。もう、いつも真希と居る時の俺じゃなくなりそうだ。自分がおかしくなる。


「……なんで 」


「え? 何、藍来」


「なんで一緒に居るの」


声が震えてる。目から涙が零れてしまいそう、悲しい。


本当に付き合ってるのか?


他の男を恋人にするなんて許せない。



「藍来。もしかして、放置されてたの嫌だった? ごめんね」


真希が心配そうにブレスレットを見つめている。


「ねえ、何で俺は真希の恋人じゃないの」


「えっ、それは」


「俺が、死んでる人間だから? 」


「違うよ、藍来……」


「死んでるから、真希を愛したらいけないのか」


俺がもし生きてたら、彼氏になれたの?

死んでたら、傍に居る資格すらない?

守るために傍にいるつもりだったのに。

きっと優しいままじゃ駄目なんだね。



分かってた。けど、でも。納得いかない。


「こんなに真希を大切にしてるのに、なぜ分からないの?」


何で他の男のものになろうとしてる?


それは俺の独占欲の強さを、知らないからだ。


絶対に優大に奪われたくない。


「ふざけんなよ。俺は真希の1番じゃないのかよ」


「それは……でも大切だよ」


「その言葉じゃもう物足りない、足りないんだ」


これ以上言ったら、隠してきた本音があらわになってしまうのに。自分じゃ止められない。




「本当の俺は、独占欲が強くていやらしい男だから。優しいだけじゃ、もう駄目だな」


「違う、藍来は優しい人だよ」


「それは愛してるから、優しいふりをしてただけ」


「そんな……」


「嫌いになるならなればいい。でも簡単に身を引くつもりはない」


どんどん剥がれていく。今まで積み上げてきたのに。


大切にすると決めたはずなのに、何で離れていく?


きっと、俺たちは生ぬるい関係だったのかもしれないね。だから、優大を選んだんでしょう。


おかしいよ。俺の真希だから。


それはどんな事があっても変わらないんだよ。




「藍来、ねぇ……」


「忘れないで。どんな形になったとしても、真希を愛してるよ」


どんな形でも、俺の中で真希が存在し続けるだけで良かったはずなのに。


それがいつの間にか、自分だけのものであって欲しいと思うようになり、欲張りになってた。


「話を聞いて、ごめんね藍来」


真希から離れ難い。凄く辛いけれど。


「また会おうね。真希」


「藍来! ねえ!」



俺は真希のブレスレットに宿るのをやめた。




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