36話

歩いてる途中で立ち止まった。


凄く緊張する、言おうとしてる言葉が中々言えない。

いつも女の子を口説いてる感じとは訳が違う。


自分の気持ちを伝えるだけなのに。何故こんなに難しいのか。


そう思うと尚更言い出せなくなってしまう。


吐く息が白い。

言いたいことが透明になって消えていくみたいで、切ない。


やっぱり、彼女と居るといつもの自分じゃなくなる。

いつもしている仮面が剥がれそうになるんだ。


「優大君、どうしたの」



告白して振られて、友達のままで居たいって言われたら辛い。


でも言わなきゃ。当たって砕けるしかない。

覚悟しろ、僕。


「真希ちゃんが本当に好きなんだ」


「知ってるよ。海の時も言ってたじゃん」


「その時よりも、もっと好きになった」


「うん、ありがとう」


真希ちゃんの顔を見ると、真剣な顔をしてた。

あまりそんな表情しないから、尚更緊張してしまう。


「私、優大君とずっと仲良くしたいな」



「……それって友達として? 」


怖い、振られてしまうのかな。僕と友達のままが良いのかもしれない。


真希ちゃんはほんの少しですらも好きじゃないのかな。


「ううん。彼女として」


え、それって。本当に?

彼女として、ってことは真希ちゃんも僕が好きなの?


「だから、私と……」


「ちょっと待って。僕に言わせて」


「うん。いいよ」


「彼氏にしてください」


「私で本当に良いの? 」


「君じゃなきゃ駄目」


「私も優大君じゃなきゃ駄目」


「ありがとう。真希ちゃん、彼女になって」


「うん、よろしくね」


嬉しい、めちゃくちゃ嬉しい。付き合えるなんて。


僕を好きになってくれたんだ。



「ねえ、手、繋がない?前も繋いだけど、今度は恋人として」


「私、手が冷たいかもしれないよ」


「僕があたためてあげる」


「ふふっ。優大君冷え症だよね」


「あ、そうだった」



手を差し出すと、繋いでくれた。

それがすごく嬉しくて堪らなかった。


繋いだ手が段々あたたかくなっていくような気がした。


僕の手が汗ばんでしまったらどうしよう。

緊張してる自分が居るなんて、何だかくすぐったい感じがする。


彼女の存在が愛しい。


真希ちゃん、好きだよ。


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