30話

どうしよう、怒らせるつもりなんてなかったのに。

ただ本当の事を教えただけ。

あいつは真希の前ではいい顔してるんだ。


表向きいい人ぶっても中身が嫌な奴には変わりない。


そういう最低な奴がいつだって傷つける。

近づくことすら許さない。


真希は優しすぎる。

だから、そういう嫌なのが寄ってきやすい。


「何で優大君を嫌な風に言うの? 意味分かんない」


『だって、本当だから話してるんだよ。あいつ、性格凄く悪いし』


「そういうの止めて」


『あいつ、今まで女と付き合ってきて、本気なの見た事ない。だから、真希も遊ばれるよ』


「友達なのに」


『男女の間に友情が成立すると思うか?いや、しないだろ。優大は友達でいる気なんて、これっぽっちも無いと思うけど? 』


「藍来がなんて言おうと優大君は友達だから。私の友達を悪く言うなんて、嫌。謝って。私にじゃなくて、優大君に」



『嫌だ、俺は間違ってない』


「じゃあ、言うけど私と藍来は一体どういう関係なの。男女の間に友情なんてないんでしょ。だったら友達でも何でもないよね」


『真希が望むなら、俺は恋人にだってなれる』


「幽霊が恋人なんて、あり得ないから」


『俺は本気だ』


「ふざけないで。しばらく口ききたくない」


そう言って彼女は、泣いた。

その涙さえも愛しくて綺麗だと思ったけど、幽霊だから拭うこともできない。


真希がブレスレットを外した。

枕元に置いてあった、いつものブレスレット用の箱にブレスレットを入れて、クローゼットの引き出しの中にしまった。


ブレスレットを離れたところに置かれたら、会話出来ない。


まさかあんなに怒るだなんて。思ってもみなかった。

優大のことを信じきってるみたいだ。



距離を置くつもりなんだろう。

どれくらいか、1日や2日で済めばいいんだけど。

それでも離れてしまうのは寂しい。


どうして怒らせてしまったんだろう。


何て言えば良かったんだよ。


ちゃんと言わなければ伝わらないはず。


そのためにはどんなに残酷でも話さなければならない。できるだけ優しく、でもはっきりと。


真希のためを思って言った。


間違ってない、何も悪くない。


悪いのは優大だ。あいつのせいで真希が、毒されていってる。

彼女がなんにも知らないのをいい事に騙してるんだ。


俺が何がなんでも守ってやらなきゃ。



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