29話
『居ない間、1人で頑張ってたんだね。居なくなってしまって、ごめんな』
「謝らないで。藍来はブレスレットに宿ってるんだから、仕方ないよ。優大君が持って行っちゃった訳だし」
……仕方ないか。
そう言われてしまうと悲しくなってしまう。
俺が真希を守護したり会話が出来るのは、彼女がブレスレットを付けている時や持ち歩いてる間、あとは彼女の近くにブレスレットが置いてある場合だけ。
その時しか魔除けや癒しの力が効かない。
傍に居ないと守れないんだ。
俺が何らかの理由で離れてしまったら、どうにも出来ない。
自分の不甲斐なさを思い知った。
あまりにも不便過ぎて駄目だ。実体がないからブレスレットに宿るしかない。嫌に思えてくる。
第一、優大が余計な事したからだ。ブレスレットを持って行かなければ、彼女の仕事のミスを防げた。
俺の邪魔が出来てさぞ楽しかったろうに。
優大。お前は真希に本気じゃないから、これ以上仲良くさせる訳にはいかない。
『真希、優大の事なんだけど』
「どうしたの、藍来」
『あいつと関わるのは、止めた方が良い』
「え? 何で? 良い人なのに。それに仲良くなったの藍来だって、知ってるでしょう? 」
良い奴なはず無いだろ。やっぱり騙されてるんだ。教えてあげないと。表の顔しか知らない真希が気の毒だ。
『あいつ、俺と真希を引き離そうとしてる』
「まさか。ブレスレットを返してくれたんだから、そんな訳ないよ」
『絶対に、真希を傷つける』
「傷つけるも何も、私の友達だよ。気にしすぎじゃないかな」
友達な訳無い。
本気じゃないんだよ、あいつ。
俺から真希を奪って、良い気になりたいだけなんだよ。性格が悪い男なんだ。
これ以上、関わらない方が良い。
そう言うと真希は嫌そうに顔をしかめた。
その表情を見た俺は、心がズキズキ痛くなった。
本気じゃないと知って、傷ついてるんだ。
安心させないと。優大から守ってあげなきゃだ。
『真希、大丈夫。俺が居るんだから』
「どうして、そんな風に言うの。酷いよ」
え? 優大が本気じゃないから、傷ついてるんじゃなくて?
変なことなんて言ってない。間違ってないんだから。
どうしたらいいのか。
いや、きっと勘違いをしているんだ。
俺が悪く言いたいだけだって。
違うんだ、そうじゃなくて。
大切に思うからなんだよ。悪い奴と関わったら、真希が辛い思いをする。だからいつものように守りたい。それだけなんだよ。
『いや、だから、優大は本気じゃない……』
「余計なお世話だよ。だって、本気かどうかなんて、藍来が言うことじゃないよ」
まずい、思ってたのと違う。話せば分かってくれると思ってたんだが、優大の味方をするなんて。
『優大が本気になるかもって言ってたんだよ。今、本気じゃないなら、別に好きじゃないってことだよ。分からないのかい』
「好きって言われたけど、付き合ってないから大丈夫」
『だから、付き合ってないのは優大に遊ばれてるからだよ。分からないの?』
「いい加減にしてよ!」
真希が声を荒げたので、びっくりした。
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