ー優大ーまたね

23話

芸能人が足しげく通う、居酒屋前で待ち合わせ。

少し遅れて真希ちゃんが来た。


「遅れて本当にごめんなさい。さっきまで仕事が終わらなかったんです。何とか終わらせて、ダッシュしたんですけど」


確かに息が乱れてる、大丈夫かな。


彼女のスーツ姿、結構かっこいいかも。


スマートに見えるし。


トレンチコートがブラックだからシックでエレガントさがある。

前はあったかそうな服装だったから、なんか新鮮。


真希ちゃん、熱いのか手でパタパタと扇いでる。

顔が赤い。


ベタベタする甘ったるい林檎飴を感じさせるような、なんともいえない色気だ。


その甘さに噛みつきたくなるような、でもあえて逆らいたい気持ちになった。


だから出来るだけ優しい笑顔を作る。

隠したい思いだったから。ひっそりと感じていたい甘味な感情。


「大丈夫だよ。僕の方こそごめんね。真希ちゃんがお休みの日にすれば良かったんだけど、ブレスレット早く返した方がいいかなって」


ひたすら何度も謝ってくれた。遅れたの30分くらいだし、全然大丈夫なのに。

真希ちゃんの為なら、いくらでも待てるよ。 僕は。

それに20時半だから、まだ飲めるだろうし。


「それにね、直ぐ会いたかったから。待ち遠しかったんだ。だから来てくれてありがとう。嬉しい。」


「いえいえ。ここって居酒屋ですよね、大丈夫なんですか? 声かけられたりしません? 」


「大丈夫だよ、個室だし」


「個室、ですか。そうですよね」


誰にも邪魔されたくないから、個室だよ。


店員に案内してもらい、部屋に入ると。座布団が敷かれていた。照明が明るすぎないから落ち着いた空間となっている。


真希ちゃんが奥に座った。僕が先に手前側に居るからだ。すぐに帰ってほしくないから、この位置に座ってもらえるように、仕向けた。



今日はブレスレットを返して欲しいから、来たんでしょう。


ほんのちょっとでも僕に会いたかったから。だったら本当に嬉しいんだけど。


真面目な真希ちゃんだから絶対、次はもう会わないって言うだろうな。



実は、凄く良い作戦考えてるんだよね。だからまた会ってくれるはず。



「真希ちゃん。ブレスレットを返す前に、ちょっと飲まない? 」


「飲みません。ブレスレット返してくれないんですか? 」


真希ちゃんが顔をしかめた。困った表情、凄く可愛い。

前よりはっきり断ってくるね、更に燃えてしまうよ。

絶対落としたい。


「酔わせてどうにかする訳じゃないよ?少し飲むだけ。話がしたいから、ね? お願い! 」


「私、そういうの困るんですけど……」


困らせたくて、ブレスレットを直ぐに返さないんだよ。


本当に酔わせて、エロい事したいんじゃないよ。

だって一夜限りじゃ駄目なんだ。身体の関係だけじゃなく、僕に夢中になって欲しいから。じゃないと、つまらないでしょう?


簡単にいかないから面白いんだよね。恋愛ってものは。


強引にでも手に入れたくなるよね。

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