ー優大ー早く僕のものになってよ

17話

あっくんを散々怒らせて楽しんだ僕は、久しぶりにメンバーに会う事にした。


日曜の昼間、天気が良くて空気も澄んでる。冬だ。


ベランダの窓を開けて深呼吸した。

吐く息が白くて、尚更寒く感じる気がする。

煙草を吸おうとポケットに手を突っ込んだけど、綺麗な空気を汚してしまうみたいに思えたから止めた。

集まるにはいい日だ。気分が明るくなる。

背伸びしたら、眠気がふっ飛んだみたいな欠伸あくびが出た。



元気にしてるかな?


っていっても約2ヶ月ぶりだから、それなりには会ってるかも。


勿論、彼も一緒。でも2人とも霊感が全くないから、あっくんがブレスレットの中に居るって分からないだろうな。


だから黙っておこうっと。

いちいち説明するのも面倒だし、理解してもらえないと思うから。


まあ、2人ともその手の話は苦手ではないだろうけど、たまに僕がそういう話をするからね。



僕の家にドラムのかい先輩とギターの康太こうたを呼んだ。


丁度暇だったみたいで、どちらも直ぐに来てくれるらしい。


あっくんには服のポケットの中に居てもらうんだ。

窮屈かな? 煙草とライターも入ってるポケットだし。


インターホンが鳴り、最初に来たのは快先輩。


先輩、髪切ったんだな。短髪になってる。

刈り上げの黒髪ショートヘアーがよく似合う。



「よお、優大。元気だったか」


先輩が歯を見せて、にかっと笑ってる。


「先輩、めちゃくちゃ元気です。ほらこの通り」


思いっきり笑顔を返してみせると、先輩は僕の頭をくしゃくしゃに撫でた。髪型整えておいてたのにな。まあ、いいか。



「優大、彼女出来たか」


いい事聞いてくれるじゃん。真希ちゃんの話をしそうになったけど、康太も来てからの方が良い。


「まだですけど、もうすぐかなって感じです」


「そうか、そうか。詳しく聞きてぇな」


「僕ってほら、誰もが羨むイケメンですから! だから直ぐにでも彼女になってくれると思うんですよ」


「自分でイケメンって言う辺り、心配ねぇな! 自信があるんだな! 」


豪快に笑う快先輩、いつもの笑い方だ。久しぶりに見た。安心する。


あっくんが亡くなってお別れ会した時なんて、本当にげっそりしてたから。

見た感じ少し体重戻ったっぽい。良かった。


まあでも元々、先輩はガタイがいいから。


身長が僕よりも高くて羨ましい。181cmだったっけ。 僕は172cmだからな。

自分も身長ある方だと思うんだけどな。


「さあ、上がってください。スリッパありますんで」


スリッパを出すと邪魔するぜ、募る話もあるからよ。それに、お前の話も早く聞きてぇと上がり込んだ。


先輩のテンションの高さ声や笑い方で分かる。

元気そうで何より。


リビングへ向かう先輩の背中を見ながらほっと、僕は息をついた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る