ー真希ー元気だして

11話

『ふっ……あははは! 』


凄いびっくりした。だっていきなり藍来が笑うんだもの。


なんで急に?


分からないや。変なの。


一体何があったんだろう。

考えてはみるものの分からない。


藍来に聞いた方が早いか。



ロマンスとグロテスクが流れてる途中、スマホでイヤホンをして聴いてたけれど、一時停止した。


「どうして、笑ってるの?」


気になる。なんか、心配になる。そんな風に笑ったりもするんだ。うーん、優しい彼に何かあったりして。

それなら相談に乗らないとね。



『なんでもないよ』


え、なんでもない訳が無い。絶対何かあるでしょ。

でも、あんまり聞かない方がいいかもしれないかな。

大人の事情ってやつかもしれないし、あまり触れられたくなかったりして。


それに、もしかしたら思い出し笑いかもしれないし。


『……ただ、自分に嫌気がさしたってだけ』


え、藍来が? なんで?


思わず口にした言葉。


『ううん、気にしないで。真希』


気にするよ。なんで自分の事が嫌なの?

藍来でもマイナスに考えたりするんだ。なんか、意外な感じ。何にも考えてなさそうに見えるのにな。


でもまあ、自分自身を嫌に思うの、分からなくは無い。


私も自分が嫌いでしょうがない時があった。


辛すぎてたまらなかったあの頃を思い出す。


人に話しかけられてもまともに返せない自分が凄く嫌いだった。


見た目も暗かったの。

黒髪ショートボブだったから、こけしって呼ばれてた。不気味だって学生時代いじめられてたし。



でも今は、少しましになったと自分では思ってるんだけど。


藍来はいつも私を気にかけてくれる。本当に優しい。良い人なんだから、自分自身を嫌いにならないでほしいな。


そういや彼に、自分と優大さんどっちが好き。って聞かれた時に、どっちもって答えたからかな。

傷つけてしまった?


だから、彼は自分に嫌気がさしてしまったの?


藍来の方が好きって言えばよかったのかも。


『自分の事嫌すぎる。真希が自分だけのものでいてくれたらなって。独り占めしたくて。どうしようもなくなって……それで……』




それで?その後が気になるけど、聞けない。


聞いていいか分かんないよ。



それに、どんな言葉をかけたらいいのか。


正解を自分の中で探してるのに、見つからない。


心に不安がにじみ出てくる。


あー! 駄目駄目、ネガティブ過ぎるよ。

こんなの良くない。こういう時はそうだ!



「あのー、もし良かったら、海……行かない?」



『海? 何で急に海なのかな』


そうなるよね。実は私、海大好きなんだ。


お家が海の近くなのもあって、前は色々あるとよく行ってた。でも藍来が居てくれるようになってからは仕事が忙しくて、なかなか行けなかったんだ。


久しぶりに行って、海にもやもやを流してもらおう。


きっと、彼のネガティブな気持ちも癒されるよね。



「海は良いよね。波の音とか潮風とか、なんだか落ち着くし。だから一緒に行こう」


きっと海が見方してくれる。だから行こう。大丈夫!


『寒いのに行かせられない。風邪ひく。止めよう』


止められた。


そうだ、今は冬だったね。寒い寒い冬、12月。


それでも海は迎えてくれるはず。


私、冬嫌いだけど。今行かなきゃ駄目。元気を出してもらいたいから。


「近いからいいじゃん! それに、凄くあったかくして行くから、ね? だから、許してほしいな」



『でも』


でもって言われたって。

行くって決めたんだから行くの。


そうだデートって言ったら、ついてきてくれるかも。


「私とデートして。お願い」


真剣に頼んでるんだから、断らないで。


『デートかあ。そう言われたら断れないな。分かった、行こう。絶対あったかくしてね』


「ありがとう、藍来。じゃあ、準備してレッツゴー」


良かった。やっぱりデートならOKしてくれるよね。


本当に久しぶりだからワクワクしちゃう。



それに彼も居るから。何気に一緒に行くの初めてだな。あれ?なんかドキドキする。


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