8話
咲き誇って群青は全員作詞作曲してた。
特に俺の場合は、歌詞が採用されることが多かった。
メロディアスなハードロック。その音の流れに合うように考えた、情熱的な恋愛の歌詞。
フレイムというタイトル。詞も曲も両方俺だ。
わりと初期の曲。よく知ってるな。
ーーあの日恋に落ちた 僕に火をつけた君はフレイムだね 大好きさ 君の心にも炎が宿りますようにーー
流れてきた歌詞を聴いて、照れてしまう。
大好きな真希に聴いてもらってたら尚更。
やっぱり、ちゃんと書いていればな。
もっと完成度を上げれば良かったって思ってしまった。
俺は読書が趣味だったから、想像力とか文章には自信があって、作詞なんて簡単だろうと侮あなどっていた。全く訳が違う。
初めて書いた歌詞なんて思い出しただけで最悪な気分になるほど下手。
歌詞には自信がない。真剣に聴いてくれてる彼女に申し訳ない気持ちになってしまう。
「ねえ藍来。私この曲お気に入りなんだよ。大好きなの。ふふっ、あっくんの作った音楽は凄くいいな」
こんな稚拙な自分の歌を好きと言ってくれるのも嬉しいが、俺は真希がさらっとあっくんと呼んでくれてる方が嬉しい。
愛しい人に呼ばれて、喜ばない訳がない。
『呼べんじゃん。あっくんって』
「今音楽の話してたの。聞いてた? 」
『いや、嬉しいよ。自分の曲褒められんのは。でも、あっくんって呼んでって言わなくても、呼んでくれたじゃん』
「たまにしか呼んであげないもんね」
たまに、か。
それは定期的に俺は寂しい思いをしなきゃならないってことかな。
呼ばれないんだからさ、そりゃあ寂しいよ。
『たまにじゃなくて、いつも呼んでほしいな』
「優しい甘ーい感じで言ってもだーめ」
『なんで? 』
「だって、もったいないから」
『何がかな?』
「たまにだから嬉しくなるものなんだよ。きっと」
『そんなことないよ。たまにじゃなくても凄く嬉しい』
「あっ、え? そうなんだ。そっか、というか……大切に呼びたいんだよね」
え ハート撃ち抜かれたわ。
キュン死にしそうなんだが。
まあ、幽霊だから死んでるんだけど!
大切に呼びたいって可愛すぎるよ。
『ありがとう、真希。毎日大切に呼んでくれ』
「たまに、だよ」
『えーん。寂しいよ、そんなの。毎日がいい』
「可愛く言っても駄目なの」
『照れ屋さんめ。わかってるんだからな? 』
「もう、違うったら」
『可愛いよ真希』
「いつも可愛いって言うの止めてよ」
違うわけないでしょう。 俺が真希を分からないとでも思ってる? 沢山、知ってるんだよ。
知ってること1つ1つ全部大事にしてる。
だから照れてるのだって分かるんだ。
それにね。いつも可愛いって言うのは、大好きだからなんだよ。
だって、凄く愛しいんだから言わなくちゃね。
『大好きだよ』
好きすぎて、たまらないんだ。だから大好きって言い続けたい。
真希が口元を手で隠してる、その癖は照れた時にしかしない。その癖さえも可愛いな。
「私も大好き」
言うと、私もと必ず返してくれる。
その言葉を聞くと安心する。
きっと彼女は必要としてくれてる、大丈夫って。愛されてる実感が湧く。
俺は思う。もしこれが愛じゃなかったら、なんだというんだ。
絶対に愛なんだと信じてる。
心の中心に愛しい存在が居てくれる、幸せ。
真希以外は要らない。
でも、もっと……もっと俺だけの真希で居てくれないかな?
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