ー藍来ー独り占めしたい

7話

咲き誇って群青。俺がボーカルをしていたロックバンドの名前。



活動は14年やってる。メジャーデビューして、現在10年くらい。



わりと息の長いバンドだけど、ここ1、2年は活動してないらしい。真希から聞いた。



バンドの名前の由来? 勢いで決めただけ。



確か桜が咲いていた季節だった。卒業して何年か経ってからバンド活動をし始めた。



青春気分が抜けない俺たちは青二才だからそれならかっこよく言って群青だなとか、最もらしいことをメンバーの誰かが言ってたっけ。



真希は咲き誇って群青が大好き。


部屋にはメンバーが、かっこつけて写ってるポスターがいっぱい壁に貼ってある。


専用の棚には咲き誇って群青だけのCDやライブDVDが並んでるし。相当のファンだ。



毎日、バンドの曲を聴いてる真希。


ずっと大切にしたい曲がいっぱいあるんだって。




4人組でやっていた。ドラムが俺の高校の時の先輩で、ベースの奴がその先輩と仲良くしてて、俺の後輩にあたる。ギターはベースと幼なじみ。



特にベースの優大ゆうだいが人懐っこくて。


いつもあっくん、あっくんって引っ付いてきてた。



優大は色んな先輩に凄く可愛がられてたな。


俺はあまり可愛がってやらなかった。



あいつ裏表が激しくて腹立つから冷たくしてた。



まあ、嫌いでそうしてる訳じゃなかった。


決して仲が悪いんじゃないんだ。だけど何か気に食わなくてね。



でも……もう真希が居ればバンドなんて、どうだっていい。



ボーカルを始めたのだって、メンバーであるドラマーに



「お前、顔が良いからボーカルやりなよ。それに、メンバー足りねぇんだ。やってくれ」



って言われて、渋々引き受けただけなんだ。


目立つのは大嫌いで、本当に人前で歌うのが苦痛だった。いつの間にか真剣にはなってたけれど。



もうバンドに未練などない。



俺はいつも流されてばかりの人生だった。


恋愛もバンドも全部そう。


自分から何かをやることもないし、誘われたら気まぐれに乗るだけ。いい加減だった、今思えばね。



だからこそ真希に出会って良かった。


こんなにも誰かを好きになったのは、後にも先にも彼女だけ。


この気持ちだけは大切にしたい。


ここまで夢中になれる女性なんて、絶対に運命だと思う。



彼女とは赤い糸で結ばれているんだ。違いない。



そういや前に、真希に聞かれたことがある。

歌詞って実体験を元にしてるのかって。

まさか、そんな訳ないと返した記憶がある。


実話だらけだったら大変だよ。恋の曲を作る度に恋愛してたら、だるすぎるって。


それに不倫の歌詞書いたけれど、そんなこと一切してないしな。


不倫は本当に面倒そうだからしてなかった。

面倒になるのはごめんだ。


バンド仲間で、スキャンダルになった奴が居たな。泥沼化したようでね。

それを見て大変そうだなと思ったし、俺のバンドは中堅だから、バレたらそれなりにヤバい事になる。 


それを差し引いたって、日本で不倫は許されない風潮なのに。


だから、歌詞はこうだったらいいなっていう妄想が大半で、少しだけ事実を織り交ぜてた。



そんな曲達を真希はいつも聴いてくれてる。


こんなことなら、もっと真剣に歌詞を書いたらよかったと後悔せずにはいられない。



彼女の方に意識を向けると、楽しそうに音楽を聴いている。曲は……って、俺の作った歌じゃん。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る