第44話
はずだったのだが。
「……仲間外れとかさー、なんで? って感じだと思うのよねー、私」
『……珠璃、えっと』
「あー、でもそうだよねー、私この国の人じゃないもんねー? そんな重要な話し合いに参加なんかさせられないよねー」
『お、おお、落ち着いて! 落ち着いて珠璃!』
「何言ってるの小鳥さん。私これ以上ないほど落ち着いてるわ」
にこーっと笑いながらそんな事を言ってのけた彼女に、小鳥はビクビクとすることしかできない。隠しきれていないほどの不満が彼女から溢れ出しているため、どうやって宥めればいいのかもわからない。ぴぃ、ぴぃ、と小さく鳴き声をあげるしかできなくて、勝手に右往左往していると、珠璃がスッと手を伸ばして小鳥をその指先で撫でる。
こねくり回すような撫で方だったけれど、その指先からは優しさが受け取れたため、小鳥もおとなしく撫でくりまわされていた。
小鳥を撫で回しながら、珠璃は考えていた。
自分があの席から外されることなんて分かり切っていたことである。この東春国となんの関係もない自分がそこにいても、なんの役にも立たないことなんて理解していたから。けれど、これほどまでに疎外感を覚えるとは、正直珠璃自身も思っていなかったのも事実だ。
それだけ、自分はここで一緒に過ごした人に心許してきたと言うことなのかと思い、そうして、恐怖する。
こんな風にそばにいれば珠璃は
思わずため息をついて机に突っ伏してしまう。どうしようと内心で思いながらも、未だ身動きが取れないことを理解しているため、突っ伏してしまったままの格好でお呼びがかかるのを待っていることしかできない自分に、ため息しか出てこなかった。
そんな珠璃を心配そうに見つめていた小鳥は、少しでも珠璃に寄り添おうとそっと珠璃に擦り寄ったのだった。
◯
どれほどの時間が経ったとしても、どれほどの善行を積み重ねたとしても。
この手がすでに、【汚れて】いるのは間違いなく、そして、それは結局【現実】に直結しているのだ。
そう。
嫌と言うほどに、突きつけられる【現実】。
そして、耳元で囁きかけてくる声が、心を抉るのだ。
――もう、【
◯
結論から言えば、珠璃には何も知らせてもらえなかった。それが春嘉たちの優しさなのだろうと言うことも予想できるけれど、ここでも昔の感情が邪魔をしてきそうで、それを慌てて笑顔を取り繕うことで誤魔化す。それで誤魔化されてくれているかは別として、今はそうやって乗り切ることしかできない己の不甲斐なさに珠璃はため息をつきたくなった。
そんな珠璃の様子に気づいていながらも、【彼ら】のほうもどうすることもできなくてそんな珠璃の様子を見守ることしかできない。
「……それで、春嘉さん、えっと……青龍様とお呼びした方が?」
「春嘉でいいですよ。席を外してもらって申し訳ありませんでした。細かい事を伝えられないことは、ご容赦ください」
「いえ。私は赤の他人なんだと言う事をちゃんと態度で示していただけたので逆に良かったと思います」
「珠璃……そのような言い方は……」
「あー……、別に僻んでるとか、拗ねているとかではなくてですね……いやまぁ確かにそう言った感情もなくはなかったですけど……。えっと……越えられない一線があるのだと、ちゃんと理解させてくれましたし」
珠璃の言葉に、春嘉はどう反応すれば良いのか一瞬わからなくなる。彼女が自分に向かって言った言葉は、随分と春嘉の気持ちを抉る言葉であったのだ。少なからず、春歌は珠璃を外して話し合いをしてしまった事を気にしていた。彼女の功績だって大きかったにもかかわらず、ここにきて突然突き放してしまったのだ。それを不満に思うなと言う方が無理があるだろう。
珠璃は怪我をしてまで自分たちを手助けしてくれたにもかかわらず、それに対しての敬意を示すことができなかった。
それがどうしても気になって仕方がないのだ。
「しゅ……」
「珠璃様ーっ!!」
春嘉が珠璃に声をかけようとしたところに、突然自分の後ろから結構な速さで珠璃に向かって突進していく人影に気づき、それ以上何かを言うことができなくなる。
「うぐっ」
「珠璃様、怪我は!? まだ痛むところもあるでしょう!? 治療しましょう!!」
「……………い、いま、あなたが私を固く抱きしめたせいで痛みが襲ってきたわよ……」
「えっ、ああっ!? ご、ごめんなさいーっ!!」
身体をぷるぷると震えさせながら珠璃がそう言えば、突進してきた人物の鈴は慌てたようにばっと身体を離してそれでも握っている腕を離す事なく適度な距離をとりながら珠璃に謝罪をする。そんな様子の鈴に首を傾げながらも珠璃はとりあえず今は気にしても始まらないかと思い直し春嘉を見た。
珠璃のその視線に気づいた春嘉はじっと珠璃を見つめる。珠璃も同じように春嘉を見つめてお互いが何も言わない。
ふぅ、と春嘉が息を吐き出す。
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