第14話

「なぁ、俺ら、共に…―――」



私には、解りました。




「―――…死のうか。」



そんな事出来ないのに。


なのに私は申しました。




「あなたの手で、私を殺して下さい.」



美しく、愛しい笑顔が濡れていました。




彼の何処までも優しい手が、震えながら私の首に掛かると


「滑稽だよ。…実に滑稽だ。

茶番だと、皆笑うだろうか。」



涙は止めどなく溢れ出ておりました。

それでも美しい主人に微笑みかけて私は答えました。




「いつも仰るじゃありませんか。窓辺から見えるものが全てではないのだよ。と.」




主人が嬉しそうに笑うので


わたしは静かに目蓋を閉じました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る