第13話

主人の涙が空気を濡らしました。


そうして主人が落ち着きを取り戻した頃、彼の唇に自分のそれを触れさせました。


主人は平熱です。

私はすべてを知っているかのように


「したいからしたのよ.」

そう申しました。


主人は心底辛そうに、ですが笑みを浮かべていました。

君って…そう言い、しかし続きは飲み込んでしまったのです。



「あなたの仰るとおりに致します。貴方の幸福がわたしの幸福です。どんな事でも、仰って欲しいの。」


私の言葉に、主人が顔を背けました。



「なぁ、…ミハネ。」

その声は震えておりました。



「最愛の人よ。俺らは結ばれない。そうだろ?」


「はい。」



「こんなにも愛しているのに。」


「わたしもあなたを愛しています。」



「…上手だね。」


「有り難うございます。」



震えた声もその美しい笑顔も、涙で濡れていました。

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