第12話
服を掻き集めて全裸で出て行く女性に、頭がおかしい等と罵倒されながら
情事の跡を残す寝室で二人きりになると
主人は声を震わせました。
「どうして君は…」
その目には涙が微かに浮かんでいました。
「俺が!俺が他の女性を抱いても何も感じないのかっ?」
「あなた…」
「この部屋で、この手で!…君を裏切った…。
なのに君は…嫌だと、嫌だと思ってはくれないのか?」
主人は苛立ちを、遣る瀬無い思いをわたしにぶつけます。
「…厭です。お止めになって.」
「…!!」
主人の言う通りに止める様に頼めば、主人は目を見開きました。
…が直ぐに、傷付いた様な表情をしました。
主人の求めているものは愛情なのでしょう。
ですが、わたしには主人の望む愛を、持ち合わせてはいないのです。
「ごめんなさい。ごめんなさい、あなた.」
肩を震わせて嗚咽を殺す主人を、見詰めている事しか出来ませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます