第12話

服を掻き集めて全裸で出て行く女性に、頭がおかしい等と罵倒されながら

情事の跡を残す寝室で二人きりになると

主人は声を震わせました。



「どうして君は…」


その目には涙が微かに浮かんでいました。



「俺が!俺が他の女性を抱いても何も感じないのかっ?」


「あなた…」



「この部屋で、この手で!…君を裏切った…。

なのに君は…嫌だと、嫌だと思ってはくれないのか?」


主人は苛立ちを、遣る瀬無い思いをわたしにぶつけます。



「…厭です。お止めになって.」


「…!!」


主人の言う通りに止める様に頼めば、主人は目を見開きました。

…が直ぐに、傷付いた様な表情をしました。



主人の求めているものは愛情なのでしょう。


ですが、わたしには主人の望む愛を、持ち合わせてはいないのです。



「ごめんなさい。ごめんなさい、あなた.」



肩を震わせて嗚咽を殺す主人を、見詰めている事しか出来ませんでした。

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