第11話

◆Mrs.Mikami side.


窓辺から見える街路樹は紅葉。


先程から雷雨で濡れた紅葉の赤も、晴天時と同様に鮮烈です。



「あっあっあっ!!」


今日もまた、お金で買われた女の人の切なげで甘い嬌声が聞こえてきました。


寝室で行われている事は、わたしにも理解が出来ました。


それが何を意味しているのかさえも。



「失礼します.」


わたしは洗濯物を仕舞うべく、静まり返ったその部屋に入りました。



「は?な、なにこのおばさん!普通に入ってきてんだけど!」


女性が慌てて胸元を隠しました。

女性とわたしに背を向けてベッドに腰掛けていた主人はうろんな瞳で気怠そうに私へと振り向きました。



「ちょ、あんたもなんか言って…」

「五月蝿い。此処はミハネと俺の寝室だ。俺達の勝手だろう。」


女性の声を遮った主人はわたしにいつもの目差しを向けました。


愛情に満ち溢れた優しい眼差しです。



「あなた、そちらの女性が驚いておいでですわ。」

「ああ、すまない、ミハネ。」



主人はわたしに謝ると、溜め息を吐きました。



「俺の妻はお前なんかよりずっと若々しくて美しいさ。」


そう低い声で溢したら、女性にお札を投げ渡して、出ていくよう促しました。

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