第10話

しかし、現実は何でもない事じゃない。

不貞を打ち明けた夫と、それに何の反応も示さない妻。


どう考えたって、普通じゃない。



ミハネを抱けない代わりに女性を買って。

それなのに余計に苛立ちが募るばかりだった。


ミハネが手に入らない代わりに、埋め合わせの性に、俺は縋る。



それでも朝が来て。

窓辺のミハネは、朝日に溶けてしまいそうにまばゆかった。



いつだったろう。


何かが狂い始めて、それに気付いた。



何かが?狂い始めたのは俺一人だった。

気付いたのは、手遅れだって現実。



ミハネは美しく、可憐なまま。

何も変わりはしない。



俺一人、欲の渦に呑まれて。


狂っていったんだ。

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