第7話
「あなた、酔ってらっしゃるの?」
「…少しばかりね。」
カットソーの裾から入り込む指。少し熱を帯びている様。
「いけないわ。あなた.」
これ以上抗う力を強めれば、主人を傷付けてしまい兼ねない。
冷静な回路で思考を巡らせ、主人に訴えました。
「止めて頂戴。私は….」
幾度も放った懇願にも似たわたしの声を、主人は聞き入れてくれました。
「…すまない。」
そう繰り返し、繰り返し、声を殺して泣きました。
主人の背中を撫でながら、謝罪の理由を探しました。
しかし夫婦なら求め合うことは当然で。
当然さえ叶わぬ主人は、今にも壊れてしまいそうで。
「ミハネ、愛してる。愛してるんだ。」
「わたしもよ。あなた.」
抱き締めてどうなるものでもないと分かっていながら
両の腕をもって
わたしは主人を抱き締めたのです。
皮肉な事に、この日、この出来事が
この穏やかで、優しさと愛に溢れる生活の歯車が狂うきっかけとなったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます