第5話

そうして主人は私を奥様方から引き剥がして


「大丈夫だった?」

心配そうに問うたのです。


それは石井さんの事だと思い当りました。


主人は知っているのです。石井さんがわたしを快く思っていない事を。


そして、それは『君が美しいから妬んでいるんだよ。』と幕引きしますが

わたしは主人こそが原因だと感じます。


彼女の主人への眼差し。それは羨望よりも色濃い感情が有る様で。



「あなた。ごめんなさい.」

だけどそんな事よりも、悲しいのは


「私は貴方の子供を産めない.」

あなたと云う素晴らしい人の子供を……



「私の身体は産む事が… 」



言葉よりも早く、力強い腕に抱き竦められていました。



「ミハネ。馬鹿な事を言わないでくれ。」


少し震えた腕は、平熱。



「俺は君さえ居てくれたならそれで充分に幸せだから。」


「有り難う、あなた.」


主人の優しさは、わたしには勿体無いと感じざるを得ません。


わたしは腕をそっと回すのです。



主人は、優しく、穏やかで

わたしはこんな生活を『幸せ』と位置付けます。



壊れてしまわぬようにと

腕を回すのです。

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