純粋な欲求

第4話

◆Mrs.Mikami side.


「三上さん。」


スーパーへの帰り道。私は聞きなれたそれに振り向きました。


「石井さん、守下さん.」


そこには二人。近所にお住まいの奥様です。


わたしの買い物袋を石井さんは一瞥し、夫婦だと量が多くないから羨ましいと仰いました。



「石井さんは、4人お子様がいらっしゃいますもね.」


得心して答えれば、一瞬表情が険しくなりました。



「そうなのよぉ。まぁ、将来…」

「ミハネ。」


愛しき人の声で、子供自慢に華やぐ石井さんの言葉が途切れました。


駆け寄った主人に視線が集まります。

少し呼吸を乱しているものの颯爽と歩み寄る主人は、奥様方に会釈をしました。

洒落たフランス映画の主人公さながらに。


奥様方の目差しは羨望と嫉妬が含まれていると

わたしは密かに分析した事が有ります。



「遅いから心配したよ。」

「ごめんなさい。さっき空を眺めていたせいね。」


主人は期待通りの答えに目を細めるなり、わたしの手から買い物袋をそっと取りました。



「無事で何よりだよ。さぁ、荷物を。」

「有り難う、あなた.」

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