第3話
◆Mr.Mikami side.
雨が降りしきる朝。
窓を叩く雨粒に目を覚ます。
自分の曲げた腕を枕にし、ミハネを抱き寄せるように眠っていた俺は
彼女の柔らかな栗色の髪を退かして、額に唇を寄せた。
愛おしさに、たまに苦しくなるんだ。
美しいミハネ。
時が止まって、いつまでもいつまでもこうして居たい。
俺達に子どもは望めない。
俺のこんなささやかな最後の願いも届かない。
文字通り全てをなげうって、身を粉にして働いて、金と地位を手に入れた。
それでも努力をしないで生きている者と、時間は平等に流れて行く。
そして、老いて身体が不自由になるんだ。
そんな当たり前も君を前にすると、忽ち不安に変わる。
いつまでも君の自慢の夫で居たいのだ。
俺は思わず君の唇にキスをした。
柔らかくて、温かくて
ああ。泣き出したい気持ちになる。
愛らしいミハネ。
俺と同じ指輪を左手の薬指を此の眼で認めれば
永久の愛を誓った唇で俺はまた
キスをした。
君からも求めて貰いたいと願うのは
愛しているからで
どれだけ俺が君を愛し、欲しているか
君には分からないだろう。
この心を君に見せられたらどんなに楽だろう。
楽だったろう。
誰に下らないと笑われようが、俺は本気で思うんだよ。
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