第89話
このババ、私と筒地君の距離を近づけようとなんかして、いったい何を企んでいるのか。
本当に油断ならない。
このタイミングで筒地君と二人っきりになるなんて、気まずいったら、ありゃしないのに。
「……ドコに持って行けばいいの?」
「佐藤さんのところにお願い」
「わかった。けど、帰ったら覚えておいてよ。お祖母ちゃん」
「いやー……。最近、歳の所為か物忘れが酷くてねぇ」
「嘘ばっかり」
「本当よ〜。もう既に忘れてしまったもの」
「はぁ?」
「あー、やだやだ。ボケが始まるなんて。歳は取りたくないモノだね」
絶対にそんなことはないだろうに、お祖母ちゃんはざっとらしく肩を丸めて「お父さ〜ん」と叫びながら奥に引っ込んでいった。
後を追い掛けて作業場を覗けば、お祖父ちゃんにピタリと寄り添って“今日は天気がいいわね”とか、どうでもいい話をチラホラと話している。
このタイミングでお祖父ちゃんのところに逃げ込むなんて、ますます怪しい。
私から追求されるのを避けているようにしか見えない。
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