第88話

「さて……」


「双葉ちゃん」


「わ!お祖母ちゃん⁉」




“さぁ、仕事仕事”と思いながら振り返ったら、お祖母ちゃんからいきなり声を掛けられた。


驚きのあまりビクッと肩を震わせる。



ビックリした……。


一瞬、妖怪か何かが出てきたのかと思った……、とは口が裂けても言えない。


言ったら間違いなくブチギレだ。




「ごめん、ごめん。驚かせたね」


「もー。お祖母ちゃんったら、いきなり何?」


「いやーね、双葉ちゃんにちょっと配達をお願いしたくて」


「あ、うん。いいよ」


「そ?じゃあ、筒地君〜!双葉ちゃんと一緒に佐藤さんのところに饅頭を届けてくれる?」


「え、」


「場所は双葉ちゃんが知ってるから〜」




おいおい、待て待て!と思ったが、返事をするよりも早くお祖母ちゃんが筒地君に大声で声を掛ける。



作業場に戻っていた筒地君は「わかりました!」と元気に挨拶を返した。



しまった、ハメられた……、と後悔したところで既に遅い。



お祖母ちゃんはのっそりとコチラに振り向くと、してやったりと言わんばかりに、ほくそ笑んだ。

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