第87話

「進歩しただろ」


「したした。驚くくらい」


「だから別に焦る必要はねーぞ。勝負と言っても俺にとっちゃ修行の一環みたいなモノだから」


「……うん」


「双葉が今やる事は、そうやって美味いもんを食べて笑う。それだけだ」




だから大人しくしとけよ〜、と落ち着きを取り戻した私に言い聞かせ、皐月は作業場の暖簾を上げて鼻で笑った。



“鬼嫁予備軍”って、ちゃっかり軽口まで叩いて店の奥に去っていく。



もう!またバカにして!と思ったが、不思議と腹は立たない。



心がストンと落ち着いた。


全身が琥珀糖のキラキラに包まれていくみたいに、ワクワクした気持ちで溢れている。

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