第82話

「あらあらあら、頑張ってね。筒地君」




出勤してきたお祖母ちゃんが女学生のような若々しい笑顔で筒地君の背中を叩く。



隣に皐月がいるのにだ。


まるで見えない板に遮られているかのように一方だけを応援している。



筒地君の方も満更でもない顔で笑い返していて、そんな二人の姿を拭き掃除をしながら、じとっとした目で見つめる。



裏切り者め……、と恨めしい心境。


許せない。




「頑張ります!」


「大丈夫よ。筒地君なら」


「そうだといいんですけど」


「平気だって。ね、双葉ちゃん」


「はぁ?」




いきなり話を振られ、ついつい悪態をついてしまう。



このババ、デリカシーが無さすぎでしょう。



そもそも私は筒地君じゃなくて皐月推しだし。



思わず睨んでしまったが、2人は素知らぬ顔だ。


全く気づいていない。



気づいたのは隣で下準備をしていたお父さんだけ。

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