第78話

知らないでしょう。


ただ肩が触れ合うだけで意識しまくってることなんて。



何だかもう息が止まりそうだ。


心臓がドキドキする。




この歳になって何を今さら。


子供だって欲しいと思っているのに、これじゃ先が思いやられる。



そうは思っても思考ってやつは厄介なもので、勝手に心の声が溢れて止まらない。



まさか、たったこれだけのことで自分がこんな風になるなんて、結婚する前は夢にも思っていなかった。



何なら結婚した後でさえもだ。



全然、余裕だと思ってたのに。



最近の私はおかしい。




「聞いてんのか?」


「あ、うん」


「どんなお菓子がいいんだよ」


「んー、甘くてサッパリしたやつ?」


「なるほど。甘くてサッパリしたやつな」




咄嗟に好みを答えた私の言葉を参考にするように、皐月は開いたノートに案を書いていく。



その間も心臓は慌ただしく脈を打ったまま。


一向に落ち着く素振りはなかった。



皐月は全く意識してなさそうなのに一人でドギマギしちゃってバカみたい。

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