第72話

「……何よ」


「いや。お前って店のために俺と結婚したんじゃなかったのな」


「当たり前でしょう」


「そっか」




キッパリと言い切れば、皐月は照れたように目を細めた。


テーブルに頬杖をついて、いったい何を思っているのか、感慨深げに黙り込んでいる。



初めて見る表情に軽く動揺。



まさか、わかっていなかった、とか……?


皐月の中では、ただお店の後を継ぐためだけに結婚した……と思っていたんだろうか。



意外な反応にコチラの頬まで熱くなる。



そんな反応が返ってくるとは思ってなかったし。





「若いなぁ」




そんな私たちをお父さんがニヤニヤしながら見ている。


お父さんにしては珍しい。


からかうような表情だ。

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