第70話

「どうして止めるのよ。これ以上、お祖母ちゃんが暴走する前に黙らせないと困るでしょう」


「大丈夫だから。一旦落ち着け」


「何が大丈夫なの?」




全然、大丈夫じゃない。


これはお店の危機でもあるの。



そうツッコミたくて睨んだけど、皐月は冷静な態度だ。



澄ました顔をして首を横に振っている。




言われている当事者のはずなのに、皐月は平気なのだろうか。



私は無理。


いくら筒地君を気に入っているからって難癖までつけ出すなんて。


やっていることが明らかにおかしい。


許せない。




「別にそんな熱くならなくても。祖母さんはただ、店の行く末が心配なだけだって」


「心配って?何が?」


「俺じゃ力不足だとか、筒地の方が性に合ってるだとか、色々あるんだろ」


「だから夫婦関係にまで口を出してるって言うの?他とやり直した方がいいとか、そんな?」


「そうだ。単に店を潰したくなくて必死なだけ」




サラリと何でもないことのように皐月はあっさりとした口調で言う。



熱くなった私とは違い、本当に何とも思ってなさそうに。

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