第67話
「事情はわかったけど……。お店の今後を勝負で決めるなんて微妙じゃない?」
「俺もそれは言ったんだけどよ。祖父さんが“ここで勝てなきゃ皐月に店はやらねぇ”って、言って聞かねぇんだ」
「ふーん。嫌なら勝て、か。祖父さんらしいな……」
それまで黙って話を聞いていた皐月が、溜め息を零しながら苦々しく笑う。
そりゃ、複雑だよね。
皐月からしてみれば気分の良くない話だ。
お店のためを思って毎日頑張ってくれてたんだし。
確かに筒地君は才能もあるし、天才だと私も思う。
だけど、私はやっぱり筒地君が作ったお菓子より皐月の作ったお菓子の方が好きだ。
完璧ではないかも知れないけど、食べると心がほんのりと温かくなる。
それに思い入れや情や絆だって皐月の方がずっと大きいし、うちのお菓子が好きなだけあって誰よりもお店のことを大切にしてくれるはずだ。
なのに、お祖父ちゃんときたら。
対決をして勝った方を跡継ぎにするだなんて軽薄な。
そんな、熱血料理マンガみたいなことをしないで欲しい。
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