第64話

「じゃあ、試しに手でも繋いでみるか」


「えっ?」


「人前でボロが出ないように。今から練習をしておいた方がいいだろ」


「そりゃそうだけど……」


「ほら」




そう言って手を差し出すと、双葉は恥ずかしそうに目を逸らして小さく頷いた。



そのまま手を繋いで歩き出せば、恥ずかしそうに黙って付いてくる。



しかも何かちょっと嬉しそう。


足取りが軽い。




「ははっ、ウケる」


「どうしてよ⁉」


「ガキの頃と全然変わってねぇから」


「はぁ?」




ケラケラ笑い出した俺に双葉は不満そうだ。


 

からかわれていると思ったのか、ギャーギャー文句を言いながら膨れっ面を浮かべてる。



それでも大人しく手を繋がれて歩いてるのを見ると、案外嬉しいらしい。




おもしれー。


やっぱあの頃と変わってねぇわ。


双葉は双葉のまま。




狡いけど、そこはまぁ許せよ。



お前のその顔が見たかったんだから。

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