第42話

「双葉さん。ちょっといいです?」




そしたら筒地のやつが作業場から出てきて、双葉に話し掛けた。



しょげていた双葉は途端に顔を上げて笑顔を振りまく。



だから、対応の差!


腹が立つ。



そりゃ一、従業員への態度としては百点満点なのかも知れないが、俺に向けるときの顔とはギャップがありすぎて複雑だ。



筒地も筒地で、いつも作業場で話しているときよりも口調が穏やかだし。


何かちょっと特別扱いをしているように感じる。




そう言えば……双葉が過去に付き合ってた男って揃いに揃って、こんな感じのヤツだったな。



どことなく物腰の柔らかい、爽やかな男。



俺と結婚する前に付き合っていた男もそう。


爽やかで、温厚そうで、平均より背が高かった。



時々、店にやってきては、こういう風に優しく双葉に笑い掛けてたっけ。



もしかして実はそういうのに弱いとか?



だったら俺もそうやって筒地みたいに優しくすりゃ、同じような笑顔を向けて貰えるんだろうか。



帰ったら試そうか……とまで考える。

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