第38話

「皐月さん、優しい〜」


「そうっスか」


「それに頼もしいですっ」




しかし、野菊ちゃんは空気が読めないのか、俺の前から動こうとしない。



おべっかなんか使ってないで、早く向こうで掃き掃除でもしてくれりゃいいのに。




「包装の仕方も上手いですね」


「はぁ…」


「やり方を覚えたいんで、このまま見ててもいいですか?」


「別にいいッスけど」


「やったぁー!」




“どっか行け”と思う俺の気持ちに気付かず、野菊ちゃんは能天気に微笑む。




本音を言えば怒りたいところだけど、それで辞めたら双葉が困るだろうしな……。



二号店のこともあって“従業員を増やしたい”って必死こいてたし。



ここは我慢してやるか、の心境だ。

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